不動産業者の物件の査定方法は、法律に基づく不動産鑑定士の鑑定評価とは異なりますが、その考え方はマンション査定方法の基本となります。
さらに投資用マンションの場合、家賃利回り、管理費、修繕積立金、立地、築年数、室内面積などを当該物件と比べながら価格を計算します。さらに不動産は個別性が強く、室内のリノベーションの有無や、相場より極端に高い家賃など特殊な事情がある場合は適切に補正が行われます。
ここではマンションの評価方法と査定額について解説します。
マンションの価格を決める評価方法
不動産の査定方法には、「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」の3つが挙げられます。「原価法」と「収益還元法」は、計算が難しく、また、実際の取引相場と乖離してしまうケースが多い為に、「取引事例比較法」が、主に投資マンションの取引きに利用されています。
取引事例比較法
取引事例比較法は、中古住宅の資産評価として一般的な手法です。当該物件と種々の条件が類似している取引事例を収集してその中から最も適切な事例を選択して、物件ごとの事情に応じて補正や修正して当該物件の資産価値を算出します。
中古住宅の資産評価の手法として代表的な計算法ですが、近接地域など当該物件と同様の取引が行われている場合に有効です。しかし評価を行う鑑定士により結果に差が出やすい特徴などがあります。
自宅物件の場合は、依頼物件と同種・同等・同類型の周辺物件の成約事例から坪単価を算出します。物件固有の要因や事情の修正を行い、物件の査定価格を導きだします。売主にとっては周辺の物件との比較は理解しやすく、結果的に説得力のある査定価格になりやすいものです。
ただし、対象物件と似た取引が必要でまたその判断が感覚的でもあるため、不動産会社により査定価格に差が生じがちです。現在、日本の不動産業界では中古物件の評価方法として、取引事例比較法は一般的な評価方法になっています。
原価法
原価法は、当該物件の「再調達原価」に基づいて資産価格を評価する方法。まず当該物件を新たに建築・造成した場合の再調達原価を算出して、当該物件の築年数による減価修正を行い、現在価値を計算します。建物など再調達原価の計算と減価修正ができる場合には有効ですが、既成市街地の土地など再調達原価の把握が難しい不動産では適用できません。再調達原価の計算と減価修正を適切に行えるかどうか条件があります。
再調達原価とは、仮にもう一度同じ物件を建築した場合、いくらになるかと言う価格です。再調達原価を建築後の経過年数による価値の低下分を引いて現在の価値を推定。対象物件が建物と土地の場合、再調達原価の把握と低下分の修正を適切に行うことができる場合に有効です。
対象物件が土地だけの場合でも、路線価や新しい造成地などの再調達原価を基に適切な算出ができる場合には適用されます。
例:中古住宅の場合
積算価格=(総面積x単価)x(残存年数÷耐用年数)
※建築単価と耐用年数は、物件の構造によって変わってきます。
収益還元法
収益還元法は当該物件の将来的な収益性の予測に基づいて行われる計算法です。当該物件を賃貸することで得られる利益の予測を行い不動産の適正価格を算出します。これはアパートや賃貸マンションなど収益物件を査定する際に広く用いられている評価方法です。
収益還元法には「直接還元法」と「DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法」があります。
直接還元法は、一定期間の純収益を還元利回りで割った数に100を乗じて算出する方法で以下のようになります。収益還元法は、物件が将来生み出すと予測される収益=賃料(家賃)の総額を還元利回りで割って求める手法です。
例:月額家賃10万円、希望利回り10%の場合
年間賃料総額÷還元利回り=査定価格
(10万x12ヶ月)÷0.1=1,200万円 となります。
投資家向けの収益マンションや賃貸以外の事業用不動産の売却価格の査定で多く使われる評価法です。取引事例比較法や原価法よりも、事業用は実際にどの程度の利回りで運用できるかが重要になるため、この収益還元法を基本とする方がより適切な査定価格を算出することができます。ただし、過去の運用履歴(もうけの程度)とその数字の信頼性が前提になっているので、対象物件の売主から提出された資料の妥当性を精査する必要があります。 一方、DCF法は、当該物件の保有期間における純収益と売却によって得られる価格を算出して、それぞれを現在価値へ換算して合計値を資産価格にする計算方法です。直接還元法に比べて計算は複雑ですが、空き家リスクや賃料の下落率を織り込むため、不動産の価値を正確に計算できます。
査定額はあくまで目安
査定額はあくまで目安ですので、最終的な売出価格は売主様の希望を加味して決まっていくのが基本です。
当然、売る側は高く売却したいものですが、一方で買う側はできるだけ安く購入したいと考えます。交渉によって価格が下げられてしまうことも見越して、査定価格よりもやや高めに売出価格を設定することがポイントです。
ただし、あまりに売出価格を吊り上げてしまうと、買主に見送らせてしまい、申し込みが入らないこともあります。 なお一括査定サイトなどで査定を依頼すると金額が横並びになってしまう理由は、各不動産会社が同じ「取引事例比較法」で類似する成約事例から比較推測をして査定金額を算出しているからです。