「高額査定の不動産業者にお願いしたい」と考える方が少なくないのですが、いくら高額査定をしてくれたからといって、実際に不動産がその価格で売れるわけではありません。売却を依頼する不動産会社を決める際には、査定額の高さだけで判断しないことが大切です。不動産売却はパートナーとなる不動産仲介会社選びが重要なのです。メリット・デメリットをよく比較して、自分に最適な不動産仲介会社を見極めるためのポイントをお伝えしたいと思います。
騙されない10のポイント
- 査定額が他社より2割前後高いところは危険
- 1社の査定結果を信じ過ぎない
- 机上(簡易)査定から訪問査定の流れが理想的
- 築年数の経過が査定額へダイレクトに影響する
- マンションの査定額に影響する要素を知っておく
- マンション査定の3つの方法を知っておく
- マンションの売却価格は最終的に売主が決定する
- マンションの基本情報を査定前に把握しておく
- マンションの瑕疵は査定段階で業者に伝える
- マンション査定の担当者が本当に信頼できる人かを見極める
①:査定額が他社より2割前後高いところは危険
一般的に査定額の高い業者に依頼すれば高く売れますが、逆に査定額が高すぎる業者に依頼をするのは危険です。
業者 | 査定価格 |
A社 | 3000万円 |
B社 | 2960万円 |
C社 | 3080万円 |
D社 | 3700万円←ココが危険 |
E社 | 3100万円 |
F社 | 3000万円 |
例えば、上記が6社に査定を依頼した結果だとします。ほとんど2900~3100万円の範囲内に収まっているのに、D社だけ飛びぬけて査定額が高いのが分かります。
この時、「D社に頼めば高く売れる」と考えるのは危険です。特に一括査定サイトなどから申し込んだ場合、D社は査定額を比較されることが分かっていて、あえて高く設定した可能性があります。
もちろんD社の営業マンが非常に凄腕で、高く売れる自信を込めた可能性もあります。ただ、基本的に査定額=マンションの適正価格なので、それが他社とズレてるということは、逆に能力に不安を感じます。かなりグレーな行為ですが、査定額はあくまで私見なので、罪に問われることはないのです。
②:1社の査定結果を信じ過ぎない
質の高いマンションでも運・タイミングが悪ければ売れ残って値下げをすることもありますし、買主次第では値下げ交渉がしつこいこともあります。査定額を信じすぎて話を進めすぎると、その通り売却できなかった時に首が回らなくなってしまいます。査定額の8割くらいでしか売れなかった時のシミュレーションもしておきましょう。
査定結果はあくまで各社の「私見」
そもそも査定額というのは「うちならこれくらいの金額で売れる」という各社の私見となります。外れたとしても、法的なペナルティがあるわけではないのです。また、査定額を見て「これくらいでしか売れないのか…」と思う必要はありません。あくまで価格を付けたのはその1社のみであり、他にもっと高値を付けてくれる会社があるかも知れません。出来るだけ多くの不動産会社の査定額を見比べるようにしましょう。
住みやすさや眺めの良さの感じ方は人によって違う
マンション査定では、築年数や面積、アクセスなど数字で出せるステータスの他に、周辺環境の住みやすさや眺めの良さといった抽象的なポイントもチェックされます。住みやすさや眺めをどう評価するかは、担当者の考えや各社が持っている情報によっても異なります。正確な査定を依頼するには複数社にお願いするのが理想的です。
地域の知見の深さによっても評価が異なる
不動産会社がその地域に詳しいかどうかによっても、評価は変わります。特に多いのが学区です。A中学校は進学校だがB中学校は荒れているという場合、地元の業者ならA中学校の学区に所属するマンションを高く評価するでしょう。一方、大手不動産会社の支店など、異動が多いところに査定を依頼すると、このことに気づかず査定結果に反映されないかも知れません。
③:机上(簡易)査定から訪問査定の流れが理想的
ネットによる机上査定は時間がかからないので、多数の会社に依頼をして、複数社に絞り込む時に使えますが、実際にマンションを売る場合は担当者が訪問調査をおこなわない訳がありません。つまり、机上査定を最初に依頼しても最終的には必ず訪問査定をしないとなりません。2、3社に候補を絞り込んだら、次に訪問査定を依頼しましょう。より精度の高い査定結果と担当者の対応で比較すれば、最適な1社が見えてくるでしょう。
④:築年数の経過が査定額へダイレクトに影響する
マンション査定の要素の一つに時点修正というものがあります。これはマンションの購入価格から年数が経過した分をダイレクトに引くというものです。つまり、いくらあなたが傷つけず大事に住んでいたとしても、築年数が経過すればするほど査定額は低下してしまうのです。むしろ築年数は査定額を決める最重要項目と言っても良く、築年数が1年経てば約100万円ずつ下がっていきます。マンションを査定に出すなら、少しでも早く対応することをおすすめします。
⑤:マンションの査定額に影響する7項目を知っておく
マンション査定で評価するポイントは、ある程度決まっています。部屋を隅から隅までチェックするのではなく、上記のように価格に関係するポイントは意外と少ないのです。査定・売却前に対策をする時も、ある程度ポイントを絞って対応しましょう。
- 競合の有無
- 経済状況・金融状況
- 近隣の環境
- 事件・事故・悪評の有無
- 床の陥没や水回りの汚れ
- 陽当たり
- 騒音の有無
⑥:マンション査定の3つの方法を知っておく
査定方法は取引事例比較法、原価法、収益還元法の3つがあり、それぞれ計算式も違いがあります。居住用マンションと投資用マンションでは、そもそもの計算方法が違うことを知っておくことをおすすめします。
査定方法 | 対象物件 | 査定の内容 | 計算方法 |
取引事例比較法 | 居住用マンション | 過去の取引事例から算出 | 類似物件のデータから査定額を修正 |
原価法 | 戸建て住宅の査定で用いられる | 同じ物件を立て直したときのコストから算出 | 再調達価格×延床面積×(耐用年数残り÷法定耐用年数) |
収益還元法 | 投資物件の見込み利益から算出 | 年間家賃収入÷還元利回り×100(直接還元法) |
⑦:マンションの売却価格は最終的に売主が決定する
マンションの査定結果が良くないからといって、売却を諦めることはありません。マンションの売り出し価格は、最終的に売り主の意思によって決めることが出来るのです。つまり、査定額が低くても、高く売り出して成約が取れれば何の問題もないということです。
相場より高く売り出すことも出来る
例えば、目標利益が3000万円だったのに査定額が2800万円だったマンションを、3000万円で売り出すことが出来るのです。目利きだったら「相場より高くて損だ」と見抜くことが出来ますが、良いマンションの基準というのは人それぞれです。売り出し価格のまま購入してくれる人も0ではないので、チャレンジする価値はあります。
適正価格との大きなズレに注意
査定額と売り出し価格があまりにもかけ離れていると、売れ残る可能性が高くなるので注意しましょう。不動産売却に要する期間は一般的に3~6ヶ月と言われてます。値下げを何回もしていると結果的に査定額を割ってしまうこともあり得るので注意しましょう。
⑧:マンションの基本情報を査定前に把握しておく
案外、査定を依頼したいマンションの詳しい内容を知らない方も多いと思います。特に登記簿謄本をチェックする機会は一般の方はあまりないので、実は亡くなった親や親族が公式の所有者になっているかも知れません。登記簿謄本や購入時のパンフレットのチェックなどをおこない、最低限の情報把握をしておきましょう。
⑨:マンションの瑕疵は査定段階で業者に伝える
物件の傷・凹みや過去に室内で殺人事件があったなど、物理的・心理的に次の入居者のデメリットとなる欠陥を瑕疵と言います。長年住んでいて傷・凹みのある部屋の存在を知っているけど、「相手はプロなので伝えなくても分かるだろう」「隠していたほうが査定額は上がるかも?」といった考えで担当業者に告知しないと後で大変な目にあいます。仲介業者は査定時・内覧時に全て物件を見る訳ではないので、売主が黙っていれば気付かないことも多いです。しかし、購入して入居する方は全て物件を見るようになるので、隠していた瑕疵に必ず気づきます。この時、売主が瑕疵担保責任に問われて、高額賠償を負わされる恐れもあります。メリットになりそうな部分は一切包み隠さず、査定の前に共有しましょう。
⑩:マンション査定の担当者が本当に信頼できる人かを見極める
マンション査定はただ高ければ良いということではありません。査定額の信ぴょう性もしっかり考えましょう。査定が信頼できるかを見極めるには、依頼した業者の実績などを調べる必要がありますし、担当した営業マンの人柄やコミュニケーション能力なども重要になってきます。
★実践版★ 査定時に重視したい10のポイント
悪徳業者に騙されないためのチェックリスト
売却査定で適切な会社選びをするためにチェックするべき実践のポイントです。
- 多くの仲介実績がある
- マンションの仲介売却を得意にしている
- 同じようなタイプのマンションの仲介実績が豊富
- 服装・髪型がしっかりしている
- コミュニケーション能力の問題がない・違和感なく話せる
- ダメな理由や限界を口にしない
- 業界特有のルールや用語を用いず、分かりやすく説明してくれる
- どんな手続きでもメリットからデメリットまで丁寧に説明してくれる
- 税金や相続・権利に関する話も詳しく説明が分かりやすい
- 1人が案件を抱え込みすぎていない・じっくり対応できる時間がある
売却仲介を依頼する不動産会社を決める前に、下記の4点を確認してください。
- 査定を受ける前に、自分で相場を調べたか?
- 不動産会社は、近隣の物件情報をきちんと把握したか?
- 不動産会社から、近隣の販売実績は明示されたか?
- 不動産会社から、査定額の根拠について納得のいく説明をされたか?
不動産売却の成否は不動産仲介会社選びがカギとなります。
それぞれの特徴を押さえ、あなたの条件にあった不動産仲介会社を選びましょう。不動産売却はパートナーとなる不動産仲介会社選びが非常に大切です。メリット・デメリットをよく比較して、自分に最適な不動産仲介会社を見極めましょう。